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厳冬のパタカマヤ

顔を洗おうと洗い場に行くと、今朝も水道管は凍っている。
冬至にあたる最も寒い日は過ぎたというものの、パタカマヤの冬は相変わらず厳しい。
その寒さに追い討ちをかけるかのように、7月下旬にはボリビアのみならず南米の多くの場所を大寒波が襲い、農作物がダメになったり、多くの人々(特に子供)が凍死するといった被害が出た。
この様子は日本でもニュースになった程であり、「異常気象」という言葉を思い浮かべずにはおれない。

09年7月30日にパタカマヤに赴任してから、早いもので一年以上が経った。
この一年間、楽しい日々や貴重な経験をたくさんいただいたが、「今までこれほどうまくいかないことが続くことはなかった・・・」と思えるほど、多くの失敗を味わった気がする。
そして、「国際協力」という言葉に対して勝手に思い描いていた理想像は大きく変わった。
特にここ最近、大きな失敗(それも自分にはどうすることもできないもの)が続けて起こり、正直モチベーションが下がってしまっている。
まるで大寒波に襲われているかのようだ。

先日、とあるプロジェクトを在ボ日本大使館に持っていき、無償資金協力の依頼をさせていただいてきた。
ちょうど僕が昨年赴任した頃から、パタカマヤ市役所はエル・アルトに本部を置くNGOの技術支援を受け、「学校給食改善プロジェクト」というプロジェクトを開始し、僕もその当初から現在に至るまで、彼らNGOとの各種会合、ワークショップにほぼ毎回参加してきた。
ボリビアでは Desayuno Escolar(学校朝食)を各市町村が提供することが義務となっており、パタカマヤではこれまで袋入りのクラッカーやヨーグルト等の乳飲料を週3日、各学校に配布してきた。
しかし、パタカマヤでの学校給食には問題があった。
配布されるこれらのクラッカーや乳飲料は通りの商店で買えるものと同じであり、しかも毎日同じものが出されるので、子供たちは飽きてしまい、食べたり飲んだりしないどころか、捨ててしまうことさえあったようだ。
仮にしっかり消費されたとしても、これらは低い栄養価しか有していないものであるため、「ただお腹を満たすもの」でしかなかった。
また、基本的に各家庭ではしっかりとした朝食を食べさせることはめったにないようで、多くの子供たちが朝食として一杯のお茶を飲んできて終わりといったことも珍しくない。
結果的に、子供たちの栄養状態は悪く、貧血状態を生み、効果的な学習ができないという問題が生まれている。
問題はこれで終わらない。
パタカマヤの住民の大半は農牧畜業に従事しており、じゃがいも、にんじん、ソラマメ、大麦、キヌア、マカといった農作物や牛乳を生産している。
しかし残念なことに、彼らの多くはこれらの農作物や牛乳を生産し、市場や乳製品を作る企業に売るだけで、自分たちで消費していないのだ。
どれだけ栄養価の高いものを生産していても、それらは彼ら自身の体に取り込まれるのではなく、現金収入源としかなっていない。
そして代わりに、彼らは栄養価の低いクラッカーや乳製品をそのお金で買っているのだ。
ここに悪循環を見て取れると思う。

「学校給食改善プロジェクト」はこの悪循環を断ち切るために、地元で採れる農作物や牛乳を用いて、栄養価の高い給食のメニューを自分たちで作り上げ、自分たちで準備、提供しようというものであり、児童の栄養状態の改善、また地元経済の活性化を目的として始まった。
市役所やNGOだけでなく、市の教育部や教師、農民など多くの方々が計画作りに参加し、一年弱の時間を経て、ようやく新学校給食の配布までこぎつけた。
新学校給食のメニューは、にんじん、ソラマメ、キヌア、マカ等のパンといった固形物、キヌア入りの牛乳や風味をつけたヨーグルトといった液体物の2種類から成り、今後は週3日ではなく5日、さらに毎日メニューを変えることにもなり、一日に児童が摂取すべき栄養の半分をカバーする内容となった。
大変大きな進歩である。

さて、説明が非常に長くなってしまったが、僕が先日日本大使館に持って行ったプロジェクトというのは、この「学校給食改善プロジェクト」に関係するもので、「市営パン工場建設プロジェクト」というものである。
前述の通り、新学校給食メニューには地元で採れる農作物を使った各種パンが含まれている。
パタカマヤには児童7000人分のパンを作れるほどのパン工場はないため、現在、そして当面はエル・アルトにあるNGOの所有するパン工場を使用させてもらい、パンを作っている。
農作物は粉末や液体状にし、エル・アルトまで1時間半をかけて運び、出来上がったパンをまた1時間半かけてパタカマヤに持って帰っている。
時間とコストを考えると無駄が多いことは否めないが、他に方法がないのが現状だ。
したがって、日本大使館の無償資金協力制度を用いて、市営のパン工場建設のためのプロジェクトを申請しようと昨年12月に会議の中で決まり、これまでカウンターパートと共にプロジェクト作りを進めてきたわけだ。
大使館の方にもお話したところ、非常に興味を持っていただき、実は諸事情により一度書類提出の締切りに間に合わなかったものの、ご厚意で待っていただき、ついに半年以上のときを経て、先日プロジェクト提出までこぎつけたのだった。

しかし、申請時に大使館の担当者から返ってきた返答は「採用は厳しい」というものだった。
理由は市役所の銀行口座が凍結されたままで、資金を供与してもプロジェクトの遂行は難しいだろうとの当然の判断からである。
以前の記事にも書いたが、パタカマヤ市役所の銀行口座は2010年3月頃から現在に至るまで凍結されたままである。
過去2代の市長は共に汚職(公金横領と思われる)で捕まり、市長の座から降りているのだが、彼らはお互いを告発し合い、このような結末になったようで、その告発のために弁護士を雇う資金として市役所のお金を不正に流用していたこともあるらしく、結果的に市役所の銀行口座を凍結せざるを得ない状況になったとのことだ。
(ここには全て書けないほど複雑な状況であり、また何が本当かも分からないため分かりにくい説明となってしまい申し訳ないです)
当然、各種プロジェクトは資金もないため動いておらず、市役所の職員も数ヶ月に渡って無給で働いている(既に去った者も少なくない)。
一緒にプロジェクトを作ってきた僕のカウンターパートも無給で働く職員のうちの一人だ。

こんな状況ではあるが、実はパタカマヤ市は既に無償資金協力制度に別のプロジェクトを申請済みで、今年3月にそのプロジェクトの調印式を済ませ、必要資金の小切手も大使館より受け取っている。
しかし、銀行口座が凍結されたままで状況も一向に好転せず、3月から今に至るまで、小切手は小切手のままで、プロジェクトにも何の進展も見られない。
この無償資金協力制度を用いた場合、プロジェクトは一年以内に完了しなければならず、大使館としては前述のプロジェクトが来年3月に終わった後で、僕たちの作っていたプロジェクトを採用するつもりで考えてくださっていたそうだが、前のプロジェクトに何の進展もないため、今月8月には市役所に最後通告をし、小切手も回収しようとしているとのこと。
大使館からの信頼は大きく失われてしまった。

これらの話を大使館担当者の方から伺い、僕もカウンターパートも大変ショックを受けた。
これまで費やしてきた時間と労力・・・僕ら以外にプロジェクト作成に関わってきた人たちの協力や期待・・・パタカマヤの将来に対する夢・・・これら全てが大使館内の一室で、そして僕の心の中で水の泡となって消えていった気がした。
特に、これまで数ヶ月間無給で働いてきたカウンターパートの気持ちを思うとやるせなかった。
実はプロジェクトを提出した前日に、彼の5歳になる息子さんが急病でラパスの病院に搬送されることになり、彼も大変な心配事を抱えながら大使館に赴いていたからだ。
息子さんに付き添うため急いで休暇許可を取り、パタカマヤからラパスへと向かう際、彼に少しのお金を握らせて見送ったが、こんな大変な状況の中でも「明日は必ず大使館に提出に行こう」と涙ぐみながら話していた。

プロジェクトの内容が悪いわけではない。
それどころか、大使館の方も非常に興味を持っていて採用に前向きであった。
大使館へ向かうため市役所を発つときも、市長をはじめ市議会の方々等、皆が期待を持って送り出してくれた。
パタカマヤ市のためと思い、これまでやってきた。
このプロジェクトは僕が勝手に作り、提案し、推し進めてきたわけではなく、僕は無償資金協力制度という存在の紹介をし、必要なときに補佐をしてきただけで、彼ら自身のイニシアチブで内容を決定し、作成も行ってきた。
市役所内外での支持や期待も大きかった。
しかし、皮肉なことに、市役所からの申請は市役所自身の問題によって事実上却下されてしまった。
しかもその問題というのが、一部の権力者の利害に基づくもので、実際に働いてきた職員や関係者のせいではないということ。
日本から来た一人のボランティアには、この問題をどうすることもできない。
ショックの後に心に込み上げてきたのは、怒りと無力感だった。

このことを通して、僕はパタカマヤの現実、ひいてはボリビアという国の現実を見ることができた。
公的機関は一部の権力者の利害によって左右され、本来すべき業務が行われていないのが、この国の現実だ。
行政がすべきサービスは、公的機関ではなくNGOが代行している。
昨日までの身分や地位は関係なく、市長になってしまえば「市長様」と呼ばれ、その家族や友人等も市役所内でのポストが与えられる。
一度安定した地位を手に入れれば、考えることは在任中にどれだけ甘い汁を吸うかだろう。
どこの世界でもある話ではあるが、妬みから来る足の引っ張り合い等の人間関係における醜い部分も市役所内で見てきた。
特に中小の市町村では、この問題が顕著に現れており、貧しさに拍車をかける。

以前、「貧困は頭の中にある」と、とある本や人から聞いたことがある。
パタカマヤには確かに灌漑設備がない、井戸がない、トラクターがない・・・等、物質的な不足を挙げればきりがない。
ただ今回の件を通し、人々、特に権力者のメンタリティーの中にある貧しさを思わずにはいられない。
目が現実を捉え、耳が人々の声を聞き、頭があるべき姿を思い描き、口から出る言葉によって人々を導き、そして手足がその夢を実現する。
もし頭が正しく働かなければ、いくら手足が奮闘してもその努力は虚しい。
大使館からの帰り道、カウンターパートともこんなことを話していたが、仮にこの中に一定の正しさがあったとしても、「パタカマヤの貧しさはメンタリティーの中にある」と訴えることができるだろうか・・・
せっかく得た安住の地位を手放したくない権力者に対しても、生活をやりくりすることだけでも必死な大半の人々に対しても、「メンタリティーの中にある貧しさ」という言葉はどれだけ心に響くだろうか・・・
これも結局、僕のような「富める者」が語る言説の一つに過ぎないのだろうか・・・
色々な考えが頭をよぎる。
答えは今の僕には見えない。

自分の中での一つの救いは、全ての苦い経験が、僕が信じる神への祈りの答えであることだ。
プロジェクトの作成段階から申請に至るまで、あらゆる場面で神に祈ってきた。
「あなたがこれを良しとされるなら道を開いてください。そうでなければ閉ざしてください」と。
その祈りの結果がこうなのであれば、受け入れることは難しいがきっとこれが最善の答えなのであろう。
今は失敗としか思えないような苦い経験でも、神が僕に与えてくださる大きな計画の中では、失敗ではないのかもしれない。
いや、むしろ最終的には全て益につながることは間違いない。
神を信じる者に対して約束されていることはそういうことだ。

こう書いたところで、パタカマヤの現状が変わるわけではない。
それでも一人の信仰者として、厳冬のパタカマヤで神に感謝したい。
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プロフィール

taku0805

Author:taku0805
名前: TAKU
職業: 村落開発普及員
(青年海外協力隊)
出身地: 埼玉県
現在地: ボリビア
目的地: 神様におまかせ

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